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ワタミオーガニック新聞 
第26回Newspaper

ワタミファームの原点で、有機農業の経験値やノウハウを集約

ワタミファームの原点で、有機農業の経験値やノウハウを集約

冬にんじんの生産量日本一“千葉県”で20年以上、有機に取り組む

冬は、にんじんなどの根菜類がおいしい季節。寒さで凍らないように地下の根に糖分や栄養をため、グッと甘さが増して味がよくなります。
そんな一年のうちでもっともおいしいとされる冬にんじんの生産量日本一を誇るのが、千葉県です。なかでも千葉県の北東部に位置する山武市は、有機栽培が盛んな土地として知られ、品質の高い冬にんじんの一大産地となっています。

最初のワタミファームである山武農場のスタッフ

2002年、その山武市に最初のワタミファームである山武農場が開設されました。にんじんをはじめとする野菜を生産するほか、新しい作物の試験栽培や、視察や研修などの受入れも積極的に行ってきた “ワタミファームの顔”ともいえる、中核的な存在のファームです。

にんじんは“肥大した根っこ”

食卓でもおなじみの、あのオレンジ色のにんじんは“肥大した根っこ”です。
セリ科のにんじんの原産地は、中央アジアの山岳地帯。現地では雨季にいっせいに発芽し、乾季は肥大した根に養水分をためて耐える性質を身につけました。

そういった生育特性から、農場のある山武市の土壌は火山灰土が降り積もってできた関東ローム層で、水はけやにんじんの根伸びがよく、良質なにんじん栽培に適しているといわれており、農場開設当初から試行錯誤を重ねながら栽培を行ってきた作物です。

にんじんにストレスを感じさせない、こだわりの土づくり

山武農場の冬にんじんはひときわ甘く、香りよいことで評価されています。このにんじんを原料とした通販でも大人気の「キャロット&オレンジジュース」は無加糖にもかかわらず、甘くておいしいと評判です。その品質の高さの秘密は、にんじんに極力ストレスを感じさせず、健全に育てる栽培にあります。

山武農場のにんじんにストレスを感じさせない、こだわりの土

重要なのが、ほぼ1年かける土づくりです。山武農場のにんじん栽培の始まりは、冬。まず1~2月、牛ふんや米ぬか、稲わらなど地域の資源を活用した堆肥をすき込み、3月に緑肥作物の種を全面まきます。緑肥作物は、イネ科のエンバクとアブラナ科のカラシナ。5~6月にこれらをすべて土にすき込むことで、土壌害虫のセンチュウなど病虫害を抑制する効果があります。農薬を使わず、植物の力で病虫害を減らしています。

6月に肥料を入れて畝を立てたあと、しっかり湿らせた畝に透明マルチフィルムを3週間張ります。これは「太陽熱消毒」といい、有機栽培に欠かせない技術。太陽熱が閉じ込められることによって、透明マルチフィルムの下はなんと80度もの高温になり、表層にある草の種や虫の卵をほぼ退治することができます。にんじんは初期生育が遅いため、この技術によって初期の草を抑えることがポイントです。雑草のタネを減らせるため、除草の手間が減らせます。

【山武農場の土づくり】

山武農場の土づくり

そして8月、ついににんじんの種まき。にんじんの種は発芽率が低く、「発芽が命」と言われるほどここが一番重要な工程。井戸は近隣農家との共同利用によるもので、タイミングもそれほど変わらないため、お互い配慮しながら水やりを行います。種まき後、畝に設置したチューブからやさしく霧状に井戸水を与えて、種にしっかりと水分を吸収させることで、発芽がそろいます。乾燥は大敵ですが、ここで大雨が降ると種が水で流され、まき直しになってしまうことがあります。きれいに発芽しそろった様子を見ると、農場のスタッフはみんなほっこりとした気持ちになります。

にんじんの質を向上させるためのひと手間・ふた手間

発芽後もしばらくは目が離せません。太陽熱消毒の効果が持続するのは1か月ほど。初期から草が生えてきてしまうこともあり、1~2回は除草が必要です。通路は機械で除草できますが、機械が入れないところは手作業で抜いて除草します。
また、9~10月は月1回程度、畝と畝の間を除草しながら耕します。これによって排水性を向上させるとともに、土中に新鮮な空気を入れて株元の茎の部分に土寄せすると、にんじんが横に肥大し生育が促進されます。

【にんじんの栽培】

にんじん栽培

山武農場で生産しているにんじんは、「はまべに五寸」という品種が中心。上品な甘さとフルーティな香りのある昔ながらの品種です。収穫は11月~2月。20年間この地で有機農業で得た経験を活かし、段取りなど作業生産性を高めて、一番おいしい時季を逃さないよう細心の注意を払って出荷しています。
今年は5ヘクタールの畑から150トンのにんじんの収穫を見込んでいます。山武農場のにんじんは、「キャロット&オレンジ」のほかにも、宅食のお惣菜の原材料として使われたり、青果としても多く出荷され高く評価されています。

「企業だからできる農業」を目指して入社

山武農場の早藤勝農場長は、高知大学農学部で暖地農学を学び、「企業だからこそできる農業に挑みたい」とワタミに入社。2010年よりファームで活躍し、2019年、山武農場長に就任しました。
「有機農業は、ごまかしがきかないと日々実感しています。有機農業を野球にたとえると、金属バットを使えるのに、わざわざ木のバットで勝負するようなものです。勝負にならないかと思いきや、やるべきことをやると物凄く飛ぶ。やったことがそのまま素直に跳ね返ってくるんです。それが難しいところでもあり、面白いところだと思っています」

山武農場の早藤勝農場長

山武市は、農業に対する意識が高い地域。周囲の農家も田畑はきちんと手入れが行き届いているため、有機栽培だからといって除草作業ひとつでも怠ることなどできません。周囲の優れた先輩たちから教えを受けて、農業に携わる者としての意識を高められる環境が、ワタミファームの中核として有機農業に対する取り組みを下支えしてきました。そして、山武農場のスタッフがほかの農場の手伝いに行ったりすることで、また、その知識や情報が拡散されていきます。

ほかの農場の手伝いをするスタッフ

「農業はものづくりの仕事ですから、“いいものをちゃんと作る”ということが原点です。面積当たりの収量向上を常に意識しています。それができれば作業性、生産性もよくなるので経費削減にもつながります。もちろん、みんなのモチベーションも上がる。いい連鎖が生まれます」

今後の目標は、畑作、集荷、販売を通じて有機循環型モデルタウンつくりをしていくなかで、これまで以上に企業として地域の活性化に役立つような動きで地域と連携し、日本の農業を盛り上げる可能性を探したいと考えています。

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