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ワタミオーガニック新聞 
第22回Newspaper

東御農場のレタスづくりに欠かせない「緑肥」とは

東御農場のレタスづくりに欠かせない「緑肥」とは

レタス生産量全国1位の長野で作る、有機栽培の玉レタス

サラダに欠かせない野菜のひとつ、レタス。一般的にレタスと言われているのは、葉が重なり球状に育つ「玉レタス」です。生野菜サラダとして食べることが多いため、夏のイメージがあるかもしれませんが、気温が高すぎると発芽しないなど暑さには弱く、日当たりと風通しの良い冷涼な環境を好みます。そのため、レタスは夏でも涼しく湿度の低い長野県が生産量全国1位。この長野県東部に位置し、浅間連山や八ヶ岳を望む自然豊かな東御市で、有機栽培の玉レタスとロメインレタスを作っているのがワタミファームの東御農場です。
レタス生産量全国1位の長野で作る、有機栽培の玉レタス
現在の玉レタスは明治以降に伝わったとされ、戦後、洋食の普及に伴い普及してきました。今ではすっかり身近な食材ですが、どんな作物かご存じでしょうか。
レタスはキク目キク科の植物で、実はごぼうや、ワタミファームで力を入れている菊芋と同じ科の作物です。レタスの発芽の適温は15~22度と低く、生育に適しているのは15~25度 で、前述のとおり冷涼な環境が必須。また、種の発芽はとてもデリケートなため、先にトレイで発芽させ、本葉が育ったところで畑に植え替えます(定植)。その後、短ければ35日、長くても50日程度で収穫を迎えます。

玉レタスは葉が丸く結球しているのが特徴ですが、初めから丸く育つわけではありません。丸くならない外葉が育った後、芯となる葉が立ち上がり、結球を開始してから10~15日で収穫期を迎えます。ところが、気温や日当たり、土壌などの条件によって結球しない場合や、大きく育たない場合があるため、レタスが無事に育つ環境を整えることは、とても重要なのです。

現在の玉レタスは明治以降に伝わったとされ、戦後、洋食の普及に伴い普及してきました
現在の玉レタスは明治以降に伝わったとされ、戦後、洋食の普及に伴い普及してきました

農地の標高差を利用して、5月から11月まで有機レタスを栽培

東御農場は標高が600メートルから1,100メートル程にあるため、その標高差を利用して5月から11月までずっとレタスの栽培を行っています。
作付けから出荷の時期を計算し、だいたい4グループくらいに分けて、標高の低い位置にある畑から標高の高い位置にある畑へと場所を変えながら栽培していくのです。一番上までいくと、今度は下へ移動していき、また下から上へと繰り返す、この方法によってシーズンを通じてレタスをつくり続けることができています。このように畑を移動していく点で重要になるのが、輪作と「緑肥(りょくひ)」を使った土づくりです。

東御農場は標高が600メートルから1,100メートル程にある

レタスと「緑肥」の輪作で、肥沃な土壌に!

ワタミグループが推進する有機農業において、大切にしているのは健康な作物を生み出すための土壌づくり。

同じ畑に同じ作物(あるいは同じ科の野菜や植物)を栽培し続けると、畑の養分や微生物が偏って土壌のバランスが崩れてしまいます。それを防ぐために、同じ畑に異なる作物(異なる科の野菜や植物)を順にローテーション栽培する「輪作」です。東御農場では、レタスと「緑肥(りょくひ)」を交互に栽培する輪作で、バランスもよく環境負荷が少ない土壌づくりを行っています。

東御農場では、レタスと「緑肥(りょくひ)」を交互に栽培する輪作で、バランスもよく環境負荷が少ない土壌づくりを行っています。

「緑肥」とはその名のとおり、緑の肥料、つまり植物の肥料のこと。作物を収穫した後の畑に植物を植え、成長したら植物そのものを土の中にすき込み、肥料として利用します。緑肥は土壌の養分となるだけでなく、微生物の活性化、雑草や害虫・病気の抑制、土壌の団粒化(排水性、保水性、通気性を良くし、養分の保持や根の伸びやすい柔らかな土をつくる)など様々な効果があり、健康でバランスのよい土壌づくりに寄与します。

「緑肥」とはその名のとおり、緑の肥料、つまり植物の肥料のこと。作物を収穫した後の畑に植物を植え、成長したら植物そのものを土の中にすき込み、肥料として利用します。

有機農業でよく活用されている緑肥ですが、メリットは土壌の改良だけではありません。実は、環境負荷の低減にもつながっています。化学肥料の製造には原油が用いられ、製造過程でのCO2排出量も多く地球温暖化の一因です。また、原油価格の高騰に伴い化学肥料の価格も高止まりしていますが、緑肥であれば現在の世界情勢に伴う円安や、資源高に左右されることもありません。資源やエネルギーの面から見ても、緑肥の利用は持続可能な取り組みといえます。

レタスを栽培している原聖馬農場長

実際に、レタスを栽培している原聖馬農場長にお話を伺いました。 2012年の開設と同時に着任した原農場長は大学の農学部出身で、人間の生活と自然界が共生できる有機農業がやりたいと、卒業当時、有機農業に力を注いでいたワタミグループに就職。ワタミの外食部門を3年間勤務後、農業部門へ希望異動。関東の農場で3年間勤務し、2012年に東御農場をゼロから立ち上げ、試行錯誤を繰り返しながらレタスの有機栽培を成功させた人物です。

基本的に薬を使わないため、虫を避けるためにネットをかけているのですが、ネットがある状態で草取りをするため、普通の草取りよりも倍くらい大変なんです。

栽培しているレタスは本来、虫がつきにくい作物なのですが、有機栽培ゆえの苦労も多いといいます。
「基本的に薬を使わないため、虫を避けるためにネットをかけているのですが、ネットがある状態で草取りをするため、普通の草取りよりも倍くらい大変なんです。それを手間暇かけて随時おこなっています。でもそのおかげで、最近の異常気象でヒョウが降ったときは、その被害を最小限に留められたなんてこともあるのですが」というエピソードも紹介してくれました。

土も、野菜も、人も健康になる循環型農業

基本的に薬を使わないため、虫を避けるためにネットをかけているのですが、ネットがある状態で草取りをするため、普通の草取りよりも倍くらい大変なんです。

緑肥によって土壌が良くなれば、健康な作物が生まれ、それを食べる人にも還元されます。東御農場で使用する肥料は、地域の牧場などからいただく堆肥と緑肥のみ。有機農業の基本である地域循環も実現できて、経営もうまくいっているといいます。

「一般的に、有機栽培は化学肥料や農薬を使わないぶん、収穫量が少なく儲からないと言われています。東御農場の有機レタスには手間がかかっていますが、収穫量も十分にあり、ワタミグループの外食店舗や大手スーパーの販路により、採算も取れています。有機栽培の作物は少し値段が高いのですが、この何年かでお客さまの意識も変わってきました。少し高くてもおいしくて環境にいいものを求めてくださることで、やっと時代が追いついてきた感じですね」
東御農場ではすべての要素がうまく影響し合うことで、良い流れの循環型農業が実現できました。

そこで現在の東御農場では、大豆の試作に挑戦しています。
そこで現在の東御農場では、大豆の試作に挑戦しています。

レタスの栽培は順調ですが、気候変動の激しさや世界的な状況を考えると、今後は食糧危機に備えることも課題のひとつです。そこで現在の東御農場では、大豆の試作に挑戦しています。
「レタスと大豆の輪作が成功すれば、大豆はレタスの緑肥として土壌を良くするだけでなく、需要の高い有機大豆が価値の高い商品にもなる。一石二鳥です。そのためにもぜひ成功させたいと思います」

「安全で、環境に良くて、健康に良い食」のために、ワタミファームの有機農業に取り組んでいる原農場長。東御農場で、環境や体にやさしい農業をより発展させるために日々奮闘しています。

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